『アポロ13』

トム・ハンクス主演、ロン・ハワード監督。始まって数秒でこれはジョン・ウィリアムズの音楽だ、と思っていたらジェームズ・ホーナーであった。実話ベースのお話ということもあり結構固めな内容を予想していたけど、最初のシーンで主人公の一人が宇宙船のアナロジーをネタにした下ネタを放つなど、いい具合にユーモアとシリアスなドラマがミックスされ、サスペンスもダレないような、最後まで飽きない作品だった。

アメリカはアポロ11の月面歩行以来もアポロ計画を続行し、1970年にはアポロ13が打ち上げられることになった。世間の注目が減ってきている中、携わる者たち、特に念願の月面歩行へと向かう宇宙飛行士たちの士気は高かった。家族に見送られ宇宙へと旅立った彼らだったが、数々の危機が発生し、対応を迫られることになる。

たった3人、されど3人。彼らの命を、力を合わせて救おうとする人々の奮闘が熱い。密室で緊張感が高まる中、ジョークを飛ばしつつもメンバーを励ます、トム・ハンクス演じる船長の頼もしさよ。当事者の宇宙飛行士だけでなく、地球側の人々が、電力、通信、医療などそれぞれの専門を活かして連携する姿にも心を奮い立たせられる。

人は、ストレスのある状況に置かれるとつい、「なんでこんなことに…」→「誰々のせいだ」という思考に陥りがちだ。この映画でも同様の場面はあるが、船長はすぐにメンバーの言い争いを止めさせ、現状の課題に集中させる。それ以外、誰も責任論を持ち出さず一丸となって救出に尽力する。心の底から、こういう人たちと仕事をしてみたいものだ。

この映画を観たきっかけは、増田が薦めていたことだったが、彼が引用していた台詞がやはり僕の心にも残ったので、ここでも引用したい。

老人ホームに入っている船長の老母が、帰還できるか不安がる婦人と娘を安心させようとして発する言葉である。

心配しないで。たとえ洗濯機で空を飛んでてもあの子は着陸させるわ。

https://anond.hatelabo.jp/20181219152001 

人を信じる圧倒的に強い気持ちが表れた台詞だ。このミッションが成り立ったのも、宇宙飛行士と管制官やエンジニア達がお互いを信頼してベストを尽くした結果だった。僕がこの映画を観たのは、一緒に働いている人に嫌気がさしてその気持ちが人間全体に拡張されようとしている、精神状態の悪いときだった。いつもこの映画のように人間が協力し、成功を生み出せるわけではないけれど、それでも人間に対する不信が浄化されるような、気持ちのいい映画だ。

 

 

アポロ13 [Blu-ray]

アポロ13 [Blu-ray]